直接民主主義を標ぼうする日本を元気にする会のおときた都議が財政についてブログに書かれていたので色々とツッコミを入れてみます。彼のブログは高橋洋一氏の記事についてのものです。どうぞ合わせてご覧下さい。
まずツッコミたいのは彼が重きを置くとしている
「経済・財政は、『ヤバイ!』と感じた人が多数派になった瞬間に破綻する」
確かに取り付け騒ぎのようなリスクは常に存在します。しかし、それは政府の借金が多いか少ないかに関係なく存在します。
本当にヤバイかどうかは関係なく、多くの人が破綻すると思った瞬間に、その国家財政は破綻へとまっしぐらに突き進みます。株式会社も同じですよね。
この後に株式会社について触れられているのですが、株価が下がって株式会社が潰れた実例はあるのでしょうか?ドラマではそんなシナリオもあるかも知れませんし、企業で信用不安から取引ができなくなって倒産してしまったといったことはあるでしょうけど。
それはそれとして、大前提として市場に理性的な振る舞いを期待できないのであれば、市場を使うべきではありません。郵便貯金を民営化するといった愚行をしないで、郵便貯金や個人向け国債で、信用できない市場や銀行を介さずに個人と直接取引していればいいわけです。
さらに個人までもが郵便貯金や個人向け国債も嫌だというなら、日本銀行が国債を買い入れて日本銀行券を発行し、引き落としや償還に際して個人に渡せばいいわけですね。
一点目について
高橋氏の記事に最初に書かれているのは、1000兆円の借金というけど政府には資産もあるから純負債残高はそんなに多くないよといったものです。もちろん出資金や貸付金、さらに橋や道路も証券化して売ろうと思えば売れます。
ただ、この話は政府の財政と民間企業の会計を混同したようなもので、結局、「財政健全化が必要だ」という枠の中にあるものです。政府の出資・貸付先は自治体や準政府機関ですし、それらを売ったところで債務超過だから民間企業なら倒産してるといったパターンのお話に陥ってしまうでしょう。
1000兆円になる前、500兆円のときでも十分騒いでいましたから、借金の額をディスカウントしても意味があるとは思えませんし、政府が持つ資産を売って財源を確保しろといったお話になってしまうと、政策手段を失わせたり、非効率を生じさせることになってしまうでしょう。
政府資産の売却については、おときた都議も
それが本当の意味で「売っても大丈夫」なのかどうかは精査が必要です。
と指摘しておられます。
さらに面白い指摘をしています。
「え、やっぱり日本の財政って、相当に悪いんじゃ…?」
と懸念する人たちを急増させ、それが財政破綻のトリガーを引くことにもなりかねません。
物事の裏を読む感じですか?
もっとも資産を売ってもバランスシートが改善するわけではありませんから、バランスシートでは資産もあるからこれでOKじゃないかというお話で良いと思うわけですが…
二点目について
高橋氏の記事を読むと正直「めんどくさっ・・・」です。金利が発生しない国債は債務じゃない的な^^;
おときた都議は皮肉交じりに
それどころか有利子の国債から無利子の日銀券に転換する際に差益(シニョリッジ)が発生するのだから、これを続けていれば国債の総額すら減らしていくことが可能になるのだっ!
そういう意味? 利払いが戻ってくるだけなので総額は減らないと思いますが。
それはさておき、おときた都議は量的緩和の問題点について
高橋氏も指摘するように、政府が国債を発行して日銀券(紙幣)が増えれば、貨幣供給量が増えて円の価値が下がる=インフレになる可能性があります。
日本銀行券が増えたからってインフレになるわけではありません。(もっとも量的緩和で紙幣が増えるわけでもありませんが)
インフレ率は支払われる額(名目)と物やサービス(実質)の比率のことですから、札束を金庫に入れておいてもインフレになるわけではないのです。お札はインフレ祈願の御札ではないのでね^^
おときた都議は
インフレというのは(恐慌や財政破綻と同様に)国民の経済感情に左右され、いつ発生してどれだけの勢いで突き進むかわからず、一度発生してしまうとそれを「退治」することはデフレ以上に難しいと言われています。
国民が思えばインフレになる的なマインド、確かに全くありえないとは言えません。しかし、デフレ以上に難しいなんてことはありません。税率引き上げて可処分所得を減らせば、支払われる額(名目)が減るので、インフレ率は下がります。(デフレ退治はその逆をすれば良いわけですが)
それと、マイルドなインフレは悪いことではないので
で、日本でインフレが発生した瞬間に恐らく、ドミノ式に国際世論は「日本の財政ヤバイ!」論に傾いていくでしょう。
ということもないです。もちろん、ここでいうインフレは高い率を想定しているのでしょうけれども、そのインフレと財政がどう繋がるか、もう少し考えてみても良いのではないでしょうか。
最後
金融緩和どうのから政府債務に戻って
借金が200兆円であれ1000兆円であれ、単年度の収支がマイナスで返すアテのない状況はいかんともしがたいものですし、年金や社会保障などの積立不足による「隠れ借金」への懸念も指摘されています。
つくづく熟議の必要性を感じます。
これは各部門の金融純資産額(縦)を時系列(横)に表したチャートです。ご覧の通り、家計が純資産をどんどん増やしています。そして、注目して欲しいのは資産のプラス額とマイナス額が同じ高さで推移している点です。
お金と借金はセットです。家計が蓄えを増やせば、誰かが借金を増やさなければいけません。それをしないと、家計が節約した分、消費が減って、不景気になり、失業が発生し、たくさんの人が自殺という形で命を奪われてしまうのです。
政府なら「返すアテ」は税収ということになると思います。ご存じの通り国は法律を変えて増税をすることができます。ただ、例えば所得税を上げれば可処分所得が減り、景気が悪くなってってしまいます。
しかし、増税をしても景気が悪くならないときもあります。インフレのとき、人々が預貯金を取り崩すときです。そうしたときの増税はインフレ率を抑えてくれます。
本当にヤバくなる前に是正することが本質的な解決と言えます。
ヤバくなる原因が人々の心理にあるとするなら、熟議を通して理解を深めるようにすることが本質的な解決ではないでしょうか。根拠も曖昧なままでヤバいヤバいと不安を煽ることは、その反対であるように思います。
おときた都議は同年代です。中学生くらいのときに国と地方の借金が500兆円を超えたといって騒いでいた様子を見ていたと思います。財部誠一さんの借金時計が話題になったりもしました。しかし、少なくとも国民に見える形では、まともな議論は一度も行われたことがありません。
経済学者の主張に色々あっても、政治家は正しい答えを見つける努力をするべきでしょう。それをしない、不作為の責任は軽いものではありません。