選挙、もっと安くできないの?

国会議員の選挙を行うための経費のほとんどは、法律に基づいて実際に選挙事務を行う地方自治体に対して国から委託費として支払われています。今回の衆院選は632億円(閣議決定額)を予備費から使用して行われました。有権者数は約1億人、投票率は52.26%なので、投票者あたりの予算は約1,160円でした。

 

¥1,160 /

 

閣議決定された予算の全額が使われるわけではないとしても、投票者あたり一千円は下らないはずです。投票の前に投票所入場券や選挙公報を受け取りますが、世帯単位なので投票所入場券は26円(後出財務省資料)、選挙公報と合わせても100円は掛からないはずです。

 

投票箱に入れるのは小選挙区、比例代表、最高裁判所裁判官国民審査の小さな紙3枚です。投票用紙1枚あたり300円も掛かっている計算になります。

 

小選挙区
三百円
比例代表
三百円
国民審査
三百円

 

財務省の資料によると平成19年参院選では委託費が526億円、うち197億円が投票所、58億円が開票所、期日前投票経費が26億円、事務費が135億円、その他(ポスター掲示場費、選挙公報発行費、調整費等)が110億円となっています。

 

委託費以外に、衆議院選挙では候補者が費用負担をせずに出せる新聞広告や法定ハガキで50億円ほどが支出されます。

 

(参院選の委託費+衆院選での委託費以外の執行経費)

 

今回の選挙では投票所がおよそ4万8千箇所とのことなので、一つの投票所に40万円もかかっている計算になります。施設の多くは費用弁償の必要もない学校で、投票日は1日だけです。

 

会計検査院の指摘によると、投票所あたりの配置人数は平均8人で、平均従務時間は13.5時間、投票所あたりの合計従務時間は108時間ですから、投票所の経費は従務時間あたりで約3,700円という計算になります。ほとんどは超過勤務手当です。

 

投票の不正予防

インターネットからの投票を実現できれば、選挙執行経費は大幅に削減できるでしょう。しかし、投票には秘密投票と投票の任意性、本人性を確保することが要求されます。ネット投票では、これらを満たすことは難しいでしょう。

 

投票の秘密を確保することは、投票の任意性を確保するためにも重要です。会社や宗教団体が特定候補への投票を強制することがないように、投票の秘密は厳しく守られていなければいけないのです。

 

ただ、今の投票所がこれらを十分に満たせているとは言い切れないことも事実です。記名式で記載台が完全には囲われていないので、投票の秘密も十分に確保できてはいません。投票所での本人確認が十分ではないという指摘もあります。

 

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他の国での選挙では、投票箱が透明だったり、投票した人の指にインクを付けて多重投票を防いだり、記載台が布などで覆われていたりします。

 

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もっと安くできないの?

会計検査院は投票所の経費について、法律による基準額が実際の経費と比べて過大であることを指摘しています。投票所で用紙を渡したりする係を高校生のアルバイトにしてもらうだけでも100億円くらいは安くなるはずです。

 

海外ではタッチパネル式の電子投票が使われているところもあります。開票だけではなく、投票用紙を渡す係の人も省けます。

 

 

投票の秘密を確保するために記載台を覆うと、投票用紙を持ち帰って他の人に譲渡されるおそれが生じます。投票箱にシートフィード装置を付ければ、持ち帰られた投票用紙を使って複数の投票をすることも防げそうです。(入場の段階で本人確認をできれいれば)

 

 

今でも投票済みかを確認する作業にパソコン、投票用紙の発券にも機械が使われていますから、投票所入場券から投票用紙を発券する作業を無人化・ワンマン化することは難しくなさそうです。投票所をスマートにして数を増やすことができれば、投票者の機会費用を減らすことができます。

 

本人確認の方法

ある人が誰なのかを確認することは、実はかなり難しいことです。本人性と匿名性の境界は入場時ということになるはずですが、投票所入場券を持っていれば「なりすまし」ができてしまいます。写真付きの身分証明書は誰もが持っているものではありませんし、公的な身分証明書として重要な健康保険証は一時的に譲渡又は盗用されるおそれがあります。

 

選挙人名簿は住民登録を元に作られるので、郵送される投票所入場券は選挙のたびに選挙人に対して身分証明書を発行しているものと考えることができます。でも、郵便事故や郵便受けから盗まれる可能性があります。そのときに無効化と再発行をする手続きが行われなければ、なりすましは防げません。手続きが存在しても実際に行われることを期待できなければ効果は薄く、故意の譲渡を防ぐこともできません。

 

おそらく、写真などの生体情報付き身分証明書をすべての有権者が取得するという方法が一番確かな方法です。もちろん、その身分証明書が投票専用であっては、譲渡されてしまう可能性を排除できません。

 

本人確認が確かにできて、設備によって他者による干渉や執行者の不正を防ぐことができれば、投票所に多数の係員や立会人を配置する必要はなくなります。ただ、本人確認は現状でも十分ではありません。

 

インターネット投票で技術的な脆弱性やタッチパネルの誤作動を心配しなくて良いとするなら、布で覆われたブースの中に一つの電子端末があるだけで良いのです。

 

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