環境とエネルギー

  • 原子力発電
  • 気候変動対策
  • 貿易収支
  • エネルギー安全保障
  • 大気汚染等の環境影響
  • 電力の安定供給

 

これらの要素は対立することがあります。例えば、安価で備蓄ができる石炭を使用することは、貿易収支やエネルギー安全保障にはプラスですが、気候変動対策にはマイナスです。全ての要素にとってプラスになる選択肢は、エネルギーの消費量を減らすことです。

 

エネルギーを何に使っているか?

日本は消費するエネルギーのほとんどを輸入しています。石炭や石油、天然ガスを使えば二酸化炭素が排出されます。

日本では化学用途等を除いたエネルギー用途で年間約20EJ(エクサジュール)のエネルギーが消費され、そのうち半分は電力に転換されています。

 

大まかに表すと、電力供給が1000TWh(テラ・ワットアワー)、電気以外による消費が10EJです。また、電気は産業・業務・家庭がそれぞれ三分の一ずつ、燃料は産業・民生(業務+家計)・運輸がだいたい三分の一ずつ消費しています。

エネルギー用途消費のうち半分は、民生部門(家庭やオフィス・店舗など)で冷暖房や給湯、調理、照明、家電等に利用されています。

福島第一原発での事故の後、原発が止まっていても電気は足りていると言う人もいました。しかし、足りているのではなく、石油や天然ガスを輸入し、二酸化炭素を出しながら作っているのです。

二酸化炭素の排出量には燃料によって違いがあり、1TJあたりの二酸化炭素排出量は、石炭が約90t、石油が約70t、天然ガスが約50tです。
 
原発事故の後に発送電分離や電力小売り自由化が主張されるようになり、電力小売りに参入する予定の事業者は効率の悪いタイプの石炭火力発電所を建設しようとしています。

 

エネルギー利用の形は電力だけではありません。ほとんどの自動車はガソリンや軽油を使いますし、家庭の給湯や暖房にガスや灯油が使われたり、業務用でも空調にガスが使われたりします。
 
産業部門では石炭が製鉄に使われていたり、石油ボイラーが使われていたりします。それらのなかには、電力を使う方法に変えることでエネルギー消費を減らせるものもあります。

例えば、暖房は多くの地域で、灯油を石油ストーブで燃やす方法よりもエアコンを使った方がエネルギー消費を少なくできます。これはエアコンがヒートポンプという技術を使って、外気からエネルギーを奪って室内に持ってきているからです。

 

同じ電気を使う暖房でも、電気ヒーター(セラミックヒーターやオイルヒーターを含む)は効率が悪いので、それらを使用しないようにすればエネルギー消費を減らせます。

 

エネルギー利用の構造(帰属計算/2013年)

非エネルギー用途は石油化学製品などですが、廃棄物となったときに未利用エネルギーとして活用される可能性はあります。鉄鋼業は産業部門での石炭の消費で大半を占めていますが、鉄は再利用ができるので将来は減ることが見込まれています。

 

使うエネルギーを減らす

日本のエネルギー利用は決して「からからに絞った」状態ではありません。近年、省エネルギーの技術は各分野で進展がありました。運輸部門では9割が自動車によって消費されていますが、その三分の二を使う乗用車ではハイブリッドなどの低燃費車が今後も普及することが見込まれます。冷蔵庫や洗濯乾燥機の省エネルギー化も進み、エアコンの効率も改善しています。

 

一方で住宅の断熱性は十分に高くなっていません。住宅の熱損失は窓などの開口部からの割合が大きいとされていますが、雨戸のない住宅が増えてしまいました。近年では簡単に取り付けられる内窓も登場していますが、十分に安価であるとは言えませんし、生産能力を考えると急速な普及は難しいでしょう。

 

より安価で簡易な方法として、高断熱性の素材をロールスクリーン型に取り付ける方法が考えられます。高価で普及の可能性が低い選択に補助金を付けるよりも、安価で迅速な普及を図れる選択を探る必要があります。

 

高速走行するトラックは大きな空気抵抗を受けます。車両制限令などの法令は車両の長さ・高さ・幅などを指定しているため、車両形状は積載量を求めて直方体になってしまいます。規制を最適化すれば、空気抵抗を抑えたトラックが登場するかも知れません。また、長期的な選択肢として分散している工場を大規模に集約すれば、部品などの輸送を省略することができます。

 

このようにエネルギーの消費を減らす方法はたくさんあります。それらが経済と対立するとも限りません。

 

発電廃熱の利用と季節間の熱利用

民生部門が利用する熱のほとんどは低温です。ヒートポンプを使って発生させた熱を使用するときに、外気以外により優れた熱源があれば、効率を高めたり、小型化や周辺環境への影響を抑えたりすることができます。

 

ディーゼル発電機では廃熱が比較的高温になるため、給湯や空調に再利用するコージェネレーションシステムがあります。商用の火力発電では、石炭では35~45%、天然ガスでは40~55%のエネルギーが電気に転換され、それ以外のエネルギーは低温の熱として海や大気中に捨てられています。発電された電気の量を上回るエネルギーが捨てられているのです。

 

これをヒートポンプの熱源として利用できれば、暖房や給湯のために消費されるエネルギーを減らすことができるでしょう。そのためには断熱されたインフラが必要になりますが、老朽化したインフラの更新にあわせて行えば、費用を抑えることができ、経済的にも合理的な選択肢となるかも知れません。

 

あるいは夏の暑さを冬に使ったり、冬の寒さを夏に使ったりできれば、冷暖房や給湯で消費されるエネルギーを減らすことができるでしょう。夏の外気温を少し下げて、夏の都市を快適にすることもできるかも知れません。

 

そのためには、熱を長期間貯める方法が必要ですが、地中の温度が一年を通して一定だという話は聞いたことがあるかも知れません。
 
たくさんの熱を蓄えることができる水をとても大きな容器に貯めれば、同じように何ヶ月も熱を蓄えておくことができるはずです。地上にそのような大きな容器を置くことはできませんが、日本の大きな都市は海に隣接していますので、実現できるのではないでしょうか?
 

発電所の廃熱利用で中小都市の、季節間の熱利用で大都市の民生部門が空調や給湯のために消費するエネルギーを大幅に減らせるかも知れません。冬期に熱が供給されるようになれば、給湯にヒートポンプが使用されるようになり、より多くの天然ガスを給湯器よりもクリーンで効率の良い発電に使用することができるようになります。そのようなエネルギー体系の再構築による利用の最適化には大きな効果を期待できると考えています。

 

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